料理の味付けの基本となる出汁。
出汁はその味で料理の美味しさが決まる、ってくらい大切なもの。
だから、素材もこだわって選びたいです。
出汁を取るための素材は、旨味成分が多いものが適しており、かつおや煮干し、昆布、椎茸で取った出汁が和風だしの基本としてよく使われます。
そんな中、最近人気が高まっている和風だしがあごだしです。
素材は「あご」という魚なのですが、こちらも旨味成分を豊富に含んだ素材です。
主に九州地方で使われている素材なので知らない人も多いと思いますが、このあごから取られた出汁は、深い旨味がありながらサラッとした上品な味が特徴。
煮干しと昆布の良いとこ取りって感じかな。
素材の味を楽しみたいって料理にすごく向いていて、福岡では雑煮や筑前煮などに欠かせないものなんです。
でも「あご」で取った出汁はなぜそんなに美味しいのでしょうか。
その前にそもそも「あご」って何?ですよね・・。
今回は「あご」について詳しくご紹介します。
「あご」ってなに?
そもそも「あご」って何なのでしょう。
「あご」とは実はトビウオの事なんです。
日本海沿岸地域ではトビウオを「あご」って呼ぶんです。
なんでトビウオの事を「あご」って言うかって?
一説によると、あごが落ちるほど美味しいから、なんだそうです。
実際に、白身魚であるトビウオは、刺身や塩焼きなどで食べると非常に美味しく、そして低脂肪、高タンパクなので、体にも良いとされています。
そんなトビウオも、地域によって食べ方は様々で、日本海沿岸地域で取れるツクシトビウオは、干物や煮付けにして食されます。
長崎県の平戸で多く水揚げされる丸トビも干物に加工されるのですが、これがあごだしの素材となる「焼きあご」になるのです。
丸トビは小振りで脂が無いため、焼きあごに適しており、長崎県の平戸は日本一の漁獲量を誇るため、毎年多くの焼きアゴや干物の塩アゴが作られています。
そしてこの焼きあごで取った出汁が「あごが落ちるほど」絶品なのです。
あご(トビウオ)の出汁が美味しい理由
トビウオが海面を飛び跳ねるのを見たことありますか?
大きな魚から逃げる時に大きくジャンプすると言われていますが、その距離はなんと200メートル以上。
時速は60キロ以上になり、風を利用するとは言ってもそんな力がどこにあるのでしょう。
そんなトビウオだから当然体は脂肪分が少なく、身が引き締まっています。
なんとトビウオの脂肪量は約1%と非常に少ないのが特徴。
このため、酸化が起こりにくく、あまり臭みがありません。
逆にタンパク質は20%以上と豊富。
乾燥させることで旨味成分であるアミノ酸が増え、結果、極上の干物になるんです。
まさにあご(トビウオ)は干物に適した食材なのですね。
脂肪が無く、タンパク質が多いという特徴をもつ「あご」。
あごで取った出汁が他の魚に比べ生臭くなく、旨味が多く、それでいてスッキリとした上品な味になるのは、このような特徴があるからなんです。
焼きあごにするのはなぜ?
魚を煮沸したあと乾燥させる煮干しに対して、焼きあごは火で焼いたあと乾燥させる焼干です。
魚の出汁と言えば煮干しが一般的ですが、あご(トビウオ)はなぜ焼干しなのでしょう。
引用元:https://www.kubara.jp/article/kayanoya/1810kayadashi/
あご(トビウオ)の場合、淡泊な白身魚であることから煮干しでは味が薄く、あごの旨味を引き出すことはできません。
しかし、煮沸せず焼くことにより、アミノ酸がうまく閉じ込められ、旨味が凝縮されるのです。
焼きあごにすることは、あご(トビウオ)の旨味を最大限に味わうための方法なのです。
焼きあご用のトビウオは長崎県平戸で多く水揚される丸トビが使われます。
体長15センチ前後と小ぶりな為、鮮魚より干物に適しているのですね。
焼きあご作りはまず串刺しから始まります。
- 15~18匹を串に刺していきます。
- 刺し終わったら炭火で焼いていきます。
- 炭を敷いた焼き台で裏返しながら約5分。
これだけで美味しそうですよね。
- 焼きあがったあごは乾燥室で熱風を当てて乾燥させます。
- 3日間かけてしっかり乾燥させたら出来上がりです。
焼きあごで出汁を取るときは水に1晩漬けておきます。
一煮立させた後、焼きあごを濾して取り出しましょう。
焼きあごの歴史はとても古く、江戸時代、平戸藩主が干しあご・焼きあごを江戸藩邸に進呈したという記録が残っている事から、その当時から平戸の名産でだったようです。
焼きあごは九州北部を中心に、昔から縁起の良い食材として扱われているのです。
あごだしの味
焼きあごからとったダシは澄んだ黄金色で深い旨味が特徴。
引用元:https://www.kubara.jp/article/kayanoya/1810kayadashi/
他の煮干しと違って生臭さは一切なく、お澄ましに使えるほど上品。
まさに料亭の味です。
雑味が無くあっさりしているため、かつお節や昆布などとも相性が良く、合わせて使う事でより美味しくなりまよ。
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まとめ
砂糖や塩や醤油などでいくら味付けをしても、なんかイマイチ、って時ありませんか?
「旨味」である出汁が効いていないと、いくら味付けしても物足りないんですよね。
逆に出汁が美味しければ、それ以外の味付けはほとんど必要ない。
そのくらい出汁は料理にとって大切なものなのです。
今回ご紹介したあごだしはかつおや昆布、椎茸や煮干しの出汁と違ってクセが全くありません。
それなのにしっかりとした旨味がある万能だし。
上品な味を楽しみたいならお吸い物や煮物やお雑煮が最適。
まるで料亭のような味になりますよ。
鍋やうどんに使っても、コクのある旨味が引き立ってとっても美味しいです。
和風だしはさっぱりしているからこそ、旨味の違いがはっきりとわかる繊細な調味料。
あごだしを使う時はまず、出汁だけで味わってみてください。
その違いが分かるはずです。